Rhizomatiks Research x ELEVENPLAY "border" 体験の感想など
物販で売っていた前公演 “MOSAIC” の CD を聴きながら書いています
公演の概要
公式をご参考下さい
感想
- CGカッコいい
- 照明カッコいい
- 音カッコいい
- ダンスカッコいい (目の前に来るのでドキドキする)
- 運営が素晴らしい
- チケット当たって良かった!
以下多大なネタバレが含まれます。間違いとか不理解とかあったらご指摘いただけるとありがたいです。
MIRAGE との対比
もう3年も前になってしまいますが、理研と パフォーマンスグループ GRINDER-MAN の作品「MIRAGE」を体験しました。頭をがつーんとやられたのが今でも生々しく思い出されます。
似ている部分があったので比較してみます。
- (同) 遮蔽型の HMD を使い、 HMD に外づけた RGB カメラの現在の映像を表示ししたりしなかったり、透過したりするのは同じ
- (同) ダンサーが出てきて、目の前まで来たり横切ったり、体を触って実在感を確認し没入感を高める演出は同じ
- (異) border では、リアルタイムレンダリングされる CG と、RGB カメラの映像が半透明に重ねられたり切り替えられたりしますが、 MIRAGE では、過去に収録された映像と現在の映像が切り替えられたり重ねられたりします。
最後の (異) が重要な気がしました。技術的には、10人同時参加しているすべての人(WHILL)の視点を、 ladybug 等の全天周カメラで移動しながら同時に撮るのは、以下の様な理由で相当困難です
- ladybug で撮ってしまうと、ダンサーと環境しかなければ良いのですが、同時に体験している他のお客さんの位置に他の全天周カメラが収まってしまう
- 他の9台にはダミーのお客さんを乗っけて10回全天周カメラで収録する、と言う手もあるけど、他人とは言え性別が入れ替わったりするとさすがにわかる
- そもそも border ではRGBカムx2でステレオをしているので、 過去映像とのすげ替えは無理
他にも細かくいろいろありそうですが、総じて MIRAGE ほどの「現実・幻影のすげ替え・重ね合わせ」の作り込みは難しそうです。
border は、 非現実 (CGとダンスの世界、ライゾマ+MIKIKO先生的かっちょいい世界) と現実世界の境界を溶かす体験で、MIRAGE はある種の生々しい幻影を見せられる体験ってことかなーと思いました。
画質話
MIRAGEはまず低画質の世界で現実感をキャリブレーションした後幻影が融けてくる、という演出になっているので、HMDもカメラもある意味低画質で良かったのですが、カッコいいCGの世界が強く押し出されているborderでは、やはり画質がほしいなぁ、と言う感想を持ってしまいました。 Oculusもはその点まだ不足している印象です。
技術的/仕掛け的なはなし
つらつらとメモ。
写真に書き込んじゃいましたが、表に出てて体験者が直接触れるのはこんな感じだと思いました。
トラッキング周り
という流れだと想像します。 Optiが理想的に取れていれば位置姿勢が取れているので Oculusのジャイロ情報は使わなくても良いのかな。
Optiの場合、(確か)固有の位置関係にある4つのマーカの組みを1つのID付きのトラッキング対象として登録出来るのだけど、それを10組登録してトラッキングするのは結構緊張感あるなーと思いました。距離が近いと入れ替わりとかありそう。意外とだいじょうぶなのかな。。。
車いす自体の制御には、それとは別に車いすの背中につけてある三角形のマーカセットでのトラッキング情報を使う。こちらは平面の仮定を置いている、のかな。
車いすを指定時間で指定位置まで持っていくのとか、結構専門的なプログラムな気がします。映像的なものだけじゃないライゾマさま、やっぱすごすぎ。
ステレオカメラ
公式サイトのキービジュアルではむき出しになっている前面のカメラ、4つのマイクが並んでいる独特のスタイルは、PlayStation Eyeだと思います。本番ではカバーがついていました。以前 @hecomi 先生が記事にもされていましたが、 VGA 60fps で撮れる安価なウェブカムとして超優秀で、おそらくそれが買われて採用されているのでしょう。
ただ、実際体験した感じだと、あまり立体視している感じは出ていなかったような気がします。他の表現や演出にあっけにとられ過ぎていて、立体化があるかどうかを気にして無すぎたのかもしれません(笑)
照明との連動?
作品中で、白い箱が動き回って、それがさらにAR的な演出で変形したりするのですが、実世界の照明との連動が、されていたようなされていなかったような、微妙な感じでした。(後から鑑賞した際は、確かに白い箱に照明が当てられてカラフルに着色していたのですが、体験したCGの世界では、それほど色がついている印象はなかったです)
照明にColorBlast を使っていたので、照明の入力はすべて楽譜のようにデータ化されているはずです。なので、CGの世界でもそれと連動するように世界に照明を配置して光らせると、より良い感じだったかもなーと思いました。(やってたかもしれません)
ポンチョ
ポンチョを着せられたときに何でかなーと考えたのですが、体験したあと鑑賞までしてようやくわかりました。
終盤にHMD内ではCGのダンサーが踊っているシーンがあります。重畳しているものだと思って体験中は見ていたのですが、後で鑑賞してみると、実は、ステージで現実のダンサーが踊っているのと完全に同期したCGのダンサー「だけ」がHMDの中では踊っているのです。
しかし、HMDで見ている世界には、ほかの9名の鑑賞者もいます。現実の世界からダンサーだけ消すのは難しい気がするのですが、実はこのとき、現実世界と重畳されていると思い込んでみていたHMDのCGの世界は、実はフルCGなんですね。いつの間にかCGの世界に鑑賞者が入っていた!という驚きです。そのためにその日どんな格好で来るかわからない鑑賞者の服装を隠す必要があり、ポンチョを着せられていたわけです。
もしかしたら他のシーンでも、鑑賞者はいつの間にかCGに入れ替わっていたかも知れません。(演出とダンスが格好良すぎてほぼ気がつかない(笑)
オペレーション他
- 待ち時間に真鍋さん直々に出演されているインストラクション動画を見ました。これで入場から退場まで迷い無く体験することが出来ました。
- 上演の間の時間WHILLを壁寄せに並べている隙に、MBPの充電とWHILLの充電をしていたようです。ケーブル二本。すごく複雑な装置に見えますが、オペレーションがすごくスムースに行われていて素晴らしかったです
さいごに
とにもかくにもスゴイ体験でした。こんな攻めたステージを一般向けに三日間もやるというのが、すごすぎます。紅白のPerfumeといい、こういう現場での強さは Rhizomatiks さんはさすがですね。惚れます。