読書感想:情報大爆発 コミュニケーション・デザインはどう変わるか
はじめに
コミュニケーション・デザイン ファースト?
メーカーにいるとどうしても、その商品は技術的にどう優れているのか、その商品「が」生活をどう変えるのか、といった商品を核とした話になりがち。
しかし当たり前だけど、そもそもその商品が人々の手に届かないと、人々がその商品の存在を認知しないと、人々がその商品がどう言った物なのか知ることが無いと、その商品の技術的な優位性をアピールすることも、ましてや生活を変えることなども、ない。
画期的な技術で画期的な商品を作ったとして、それをどんな風に人々に届けるか、あとから広告屋さんにお願いしてなんとか考えるももちろんやるのだけど、それってUXデザイン・インタラクションデザインの世界でよく批判される、 「機能は出来ました、デザインよろしくお願いします」 的なやつで、あとから足そうとするとどうしてもどっかでかみ合わない場所が出てくる。
今の時代に合った商品の届け方・人々にどんな風に評価(噂)されて受け入れられるようなものであるか、口コミ強度の高い商品ってどんな物か。そういった観点で商品をデザインする。そんな発想法もあるのでは、と考えてみました。
本
そんなわけでコミュニケーションデザインの視点を学びたく、良い本ないかなーと思って調べてみたところ、電通提唱の消費行動のモデル"AISAS"の構築に関わられてた方が、インターネットによって情報(狭義には、広告)がどう変化するか、ということについて書いた本、と言うことでしたので読んでみました。すると広告の話だけで無く、コミュニケーション・デザイン(広義)のさまざまな豆知識がたくさん詰まっている良書でござんした。

- 作者: 秋山隆平
- 出版社/メーカー: 宣伝会議
- 発売日: 2007/10/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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インターネットが情報をどう変化させる(た)か
さすが広告屋さんの書く本なので、第一章に結論が綺麗にまとめてあります。全体を通して非常に読みやすいです。
1.今伸びているのは「情報整理産業」
溢れまくっている情報の中から、自分が本当に必要な情報をどれだけ効率的に探し出せるか。
RSS、はてなブックマーク、SNS。これは次の話とも密接に関わっている。
2.消費者相互のフィルタリング
コラボラティブ・フィルタリング。「この本を買った人は、こんな本も買っています」そういったコンピュータが知識を集積してやってくれる物もだし、尊敬するアーティストさんが「良い!」とTwitterで言っている映画を見る、てのもこれ。
3.情報価格の値崩れ
ある商品をもう一個作るのにかかる費用「限界費用」。インターネットを介してやってくる情報の限界費用はゼロである、と、直感的に見抜いている。
4.非特定型の情報を非同期に受け取る、受け手主導のコミュニケーション
情報整理の道具を使い、消費者相互にフィルタリングをすることで、ネットに一度発生した大量の非特定の情報の中から、人々が任意のタイミング(非同期)で情報を取得する
5.情報に対して飽和状態
情報を浴びすぎ。市場にあるモノたちも成熟期に達した商品が多く、機能や性能による差別化は難しい。イメージによる差別化などに頼りがちだが、その情報は他の大量の情報たちに紛れて人々の心にしみこんでいかない。
6.アテンションが希少
情報が飽和している、と言う状況をひっくり返すと、
情報を消費するもの = 消費者のアテンション = 情報取得に向ける時間(知的)コスト が枯渇している とも言える。ロングテール化しているメディア(ブログ、SNS…)が、人々のアテンションを奪い合う。
身に覚えがありすぎる
上の6点は、あくまで情報の流れ方の変化を分析したもので、そこで扱われる情報そのものはどう作られていくと良いか、といった視点ではない。
しかし、Twitterでおもしろそうな商品を知って買ってみたとか、Kickstarterでおもしろそうなことしている人に投資してみること自体がおもしろいとか、そういった体験は実際にあって、上記6点を踏まえた新しいコミュニケーション・デザインが、新しい消費を生んでいるのは事実だと、個人の実感としては感じるところ。
他細々した豆知識
この本、コミュニケーション・デザインの変化を語る上で、簡単にコミュニケーションデザインの歴史をひもといてくれていて、そこがとても良い感じの豆知識の宝庫になっています。
ロングテールの概要説明
通信のレイヤーの話
インターネットミニ歴史
Internet - Wikipedia, the free encyclopediaより
情報の構造の変化
コミュニケーションの流れ
- 情報は発見する物でも発明する物でもなく、発現するものだ。元から情報はどこかにあって、流れの中で形が見えてくるもの
- 発信-受信 ではなく、発振-共振。
- メッシュネットワークに末端は無く、誰もが情報の発信源にも受信者にもなる。その活動全体が共振となって、大きなムーブメントを作る。
フィルタを共有することによって、消費者は時間コストである「アテンション」を節約することが出来ます
などなど。
まとめ
この本は2007年に書かれていて、2014年のコミュニケーションデザインを非常に精度良く予測していると感じました。7年くらいじゃそんなに変わらない、と言うことでもあるかと思います。
本文中にiPhone的なアイテムを予測しているところもああります。この本の視点から見ると、iPhoneはコミュニケーションスタイルの変化とそれに伴う新しいニーズを的確に読んで、ベストなタイミングで技術を提供した好例だと言えるのかと思います。
インターネットの出現ほど大きくはないと思うけど、MAKERSムーブメントなんかは、人々の中の情報の流れの大胆な変化だと思いますし、そんな変化を的確にとらえた「なにか」は既に出始めていると感じます。
この本はコミュニケーションデザインの変化についての概論でしたので、もう少し具体的な話についても学んでみたいです。結構前にいくつかは読んだのですが改めて勉強してみます。

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