openFrameworks で Kinect for Windows SDK 2.0 をまるっと利用する
はじめに
この記事では、 ラッパなどを挟まず、 Kinect for Windows SDK 2.0 のフル機能を oF 内で直接利用する方法について調べた内容をまとめます。ラッパを利用しないのは、MSDN の公式リファレンスが非常にしっかりしているからです。ネットに転がっているKinect v2 がらみの情報も公式 SDK を直接たたくものが多いので、いまのとこは素で使った方がなにかと幸せな予感がしています。
- Kinect for Windows SDK MSDNのリファレンストップ
- Kinect for Windows v2入門 ― C++プログラマー向け連載 - Build Insider @UnaNancyOwen 先生の連載
oF 内で利用することで様々な機能をひっつけやすくなるので、アプリ全体としての構築も楽になると考えています。
環境
- Windows 8.1
- Visual Studio 2012 Express for Windows Desktop
- Kinect for Windows SDK 2.0
- openFrameworks for Windows Visual Studio
- Kinect for Windows v2 sensor
Visual Studio は Proの方が幸せですが、ここではExpressの前提ですすめます。
Visual Studio Community 2013 じゃだめか?
個人のデベロッパだと、Visual Studio Community 2013 を使ってアドオンうはうはしたいところです。しかし、公式には openFrameworks は、vs2013 をサポートしていません。そこで片手落ちではありますが以下の手順で ビルド環境としては2012ですが、エディタとしては VS Community 2013 を使って openFrameworks の開発 を行えるようになります。
- VS Community 2013 とは別に VS2012 Express を入れておくと、VS2012 (v110) のビルドツールが使えるようになります。
- oF の Project Generator でプロジェクトを作る
- VS Community 2013 で開くと、通常だとソリューションのコンバートを勧められますが、これをキャンセルします
VS の Solution Explorer で下図のように表示されていたらできていると思います。
このあたりは、@selflash 氏が説明してくださっているのでご参照ください。
使い方
プロジェクト設定
@kaorun55 先生の記事ではウィンドウズアプリの前提で説明されていますが、プロジェクト設定はoFでも同じです
Kinect for Windows SDK v2.0 で開発する環境を整える(C++編)
- of の Project Generator でプロジェクトをじぇねれーーとする
- 追加のインクルードディレクトリを設定する
C:\Program Files\Microsoft SDKs\Kinect\v2.0_1409\inc
- 追加のライブラリディレクトリを設定する
C:\Program Files\Microsoft SDKs\Kinect\v2.0_1409\Lib\x86
- 追加の依存ファイルに Kinect20.lib を設定する
シンプルにカラー画像の表示だけ
簡単な作例として、SDK をインストールしたらついてくる公式サンプル Color Basics-D2D をベースに、oFで動かしてみました。Kinect v2 からカラーのイメージをとってきて描画するだけ。
ofImage か ofTexture か
oF 使い的にはきっと基本的すぎてあれですが、動画をoFで描画する際にどっちを使うといいのかわかりませんでした。
調べてみたところ、下記フォーラムで同様の質問がなされていました。
ofImage は ofTexture を内部で使っていて、メモリの確保なども含めてラップしているクラスなので、描画部分に関しては差はない、とのこと。今回のような Kinect との連携だと、ofTexture を使う場合でも、ColorFrame からpixel配列をいったん引っこ抜いてからそれを ofTextureにloadData する必要があるので、確保するメモリ量的にも差がなさそうです。
コードは #ifdef
して両方試しています
あげてあります
Face Tracking も試してみた
つづけて、FaceBasics-D2D というサンプルから、顔認識に関する最低限野部分をoF向けに移植してみました。
顔出しツラいっすね。写真は悪用厳禁っす。
一生懸命口角を上げたおかげで笑顔判定がYESなのと、(普段かけない)めがね判定がYESなのが確認できると思います。(^^;)
Kinect v2 はボーンやデプスも使って顔認識とトラッキングを行うので、かなりロバストです。本当は顔出し恥ずかしいですが、写真の印刷だとほとんど判定しないのですすすs… Kinect v2 すごいっす。
コード
追加のインポート
FaceTracking の機能は Kinect20.Face.lib という別のライブラリにまとめられているので、プロジェクトの設定でそれも追加する必要があります
- Kinect.face.h を必要なコードでインクルードする
- Project Properties 追加の依存ファイルに Kinect20.Face.lib を設定する
(追記しました) ポストビルドコマンドで、dll等必要なファイルを持ってくる
また、oFやKinectのwindowsアプリは、VSのビルドコマンド内で、必要なdllなどのファイルをoFやKinectSDKのインストールディレクトリから自分の実行ディレクトリ(exeを出力するところ)にコピーしてきて、それを使ってexeを実行しています。
たとえば Kinect for Windows SDK 2.0 のサンプル FaceBasics-D2D では、下図のような指定で必要なdllなどを取ってきています。
Visual Studio で oFアプリをビルドする場合は更に、oFアプリの実行に必要なdll等一式も持ってくる必要がありますが、これは、Visual Studio向けのProject Generator でアプリを作成すれば、自動的にコマンドがセットされています。正確には、oFのインストールディレクトリ中に定義されている、デフォルトのプロパティーシートを見ています。
(下図のプロパティシートは、 VIEW > OTHER WINDOW > PROPERTY MANAGER で開きます)
したがって、今回のケースで言うと、 oF のデフォルトのポストビルドコマンドと、Kinect20.Face.dll 関連のポストビルドコマンドを同居させてあげる必要があります。
プロパティシートがプロジェクトに登録してあったら、その内容は継承されるのかと思ったのですが、どうもプロジェクト固有のプロパティに書いた内容で上書きされる仕様なようですので、すべて記入されてある必要があります。できあがりはこんな感じ。
xcopy /e /i /y "$(ProjectDir)..\..\..\export\vs\*.dll" "$(ProjectDir)bin" xcopy "$(KINECTSDK20_DIR)Redist\Face\x86\NuiDatabase" "$(TargetDir)NuiDatabase" /e /y /i /r xcopy "$(KINECTSDK20_DIR)Redist\Face\x86\Kinect20.Face.dll" "$(TargetDir)" /c /y
この状態でビルドすると、ビルド結果の出力で、exeがはき出された後にいろいろコピーしているのがわかると思います。
1> KinectV2Sample.vcxproj -> F:\develop\of_v0.8.4_vs_release\apps\myApps\KinectV2Sample\bin\KinectV2Sample_debug.exe 1> F:\develop\of_v0.8.4_vs_release\apps\myApps\KinectV2Sample\..\..\..\export\vs\Assimp32.dll 1> F:\develop\of_v0.8.4_vs_release\apps\myApps\KinectV2Sample\..\..\..\export\vs\fmodex.dll 1> F:\develop\of_v0.8.4_vs_release\apps\myApps\KinectV2Sample\..\..\..\export\vs\fmodexL.dll 1> F:\develop\of_v0.8.4_vs_release\apps\myApps\KinectV2Sample\..\..\..\export\vs\FreeImage.dll 1> F:\develop\of_v0.8.4_vs_release\apps\myApps\KinectV2Sample\..\..\..\export\vs\FreeType-6.dll 1> F:\develop\of_v0.8.4_vs_release\apps\myApps\KinectV2Sample\..\..\..\export\vs\glut32.dll 1> F:\develop\of_v0.8.4_vs_release\apps\myApps\KinectV2Sample\..\..\..\export\vs\libeay32.dll 1> F:\develop\of_v0.8.4_vs_release\apps\myApps\KinectV2Sample\..\..\..\export\vs\ssleay32.dll 1> F:\develop\of_v0.8.4_vs_release\apps\myApps\KinectV2Sample\..\..\..\export\vs\Zlib.dll 1> 9 個のファイルをコピーしました 1> C:\Program Files\Microsoft SDKs\Kinect\v2.0_1409\Redist\Face\x86\NuiDatabase\FaceAlignment.bin 1> C:\Program Files\Microsoft SDKs\Kinect\v2.0_1409\Redist\Face\x86\NuiDatabase\FaceAlignmentColor.bin 1> C:\Program Files\Microsoft SDKs\Kinect\v2.0_1409\Redist\Face\x86\NuiDatabase\FaceAlignmentColor27.bin 中略。この辺りは、顔発見のための辞書データなどをコピーしている 1> C:\Program Files\Microsoft SDKs\Kinect\v2.0_1409\Redist\Face\x86\NuiDatabase\HDFaceTracker\ViewModel\left.p.txt 1> C:\Program Files\Microsoft SDKs\Kinect\v2.0_1409\Redist\Face\x86\NuiDatabase\HDFaceTracker\ViewModel\right.mod.bin 1> C:\Program Files\Microsoft SDKs\Kinect\v2.0_1409\Redist\Face\x86\NuiDatabase\HDFaceTracker\ViewModel\right.p.txt 1> C:\Program Files\Microsoft SDKs\Kinect\v2.0_1409\Redist\Face\x86\NuiDatabase\HDFaceTracker\WholeHeadModel\FullHeadMaskVertexCorrespondence.txt 1> C:\Program Files\Microsoft SDKs\Kinect\v2.0_1409\Redist\Face\x86\NuiDatabase\HDFaceTracker\WholeHeadModel\fullMeanHead60_tri.ply 1> 57 個のファイルをコピーしました 1> C:\Program Files\Microsoft SDKs\Kinect\v2.0_1409\Redist\Face\x86\Kinect20.Face.dll 1> 1 個のファイルをコピーしました
これで実行可能です。
一応あげてあります
コードはかなりやっつけな感じで書いたので、一応上げますが、あまり参考にはされない方が良いかと思います(>_<)
先ほどのリポジトリにブランチとしてぶら下げています。
そのほかのアプローチ
以上のように使えることの確認をしましたが、ここに至る前に、いろいろ Kinect for Windows SDK 2.0 と oF のつなぎ方を調査したので、それもまとめておきます。
Kinect Common Bridge / ofxKinectv2
Kinect Common Bridge は、MSOpenTech コミュニティで開発されている Kinect for Windows SDK のラッパで、そのブランチとして 2.0 向けが開発されています。CinderやoFなどのクリエイティブコーダー向けに使いやすくするのが主目的のようです。
これを使ってoF向けにさらにラップしたのが ofxKinectv2 という addon です。これはまだ Face Tracking のフィーチャをサポートしていません。Color, Depth, Infrared, Body あたりの機能を簡単に使う分にはこれでも良さそうです。
Windows Store 向け
Channel9 (MSのデベロッパー向け広報ブログ) で、 Windows Store App 版での oF + Kinect v2 の記事が紹介されていました。この記事中で、MSOpenTech が Windows Store 向けアプリを生成する変更を加えた Project Generator 込みの oF Fork を紹介しています。もし必要があれば。
Mac
Mac + oF + Kinect v2 をやる場合は、 Theo 先生のこれが使えそうですが、試してはいません。名前かぶってますね。
Unity 使おうぜ Unity
このブログで過去に取り上げましたが、Unity Pro をお持ちならKinect v2 用の公式 UnityPackage がありますので、こちらを使うと楽ちんです。が、SDK 2.0 のフル機能を使えるわけではなさそうです(要調査) *1
さいごに
使えるようになったので、使っていきます。
*1:kaorun55 先生資料によると、FaceやSpeech、Gestureなど結構な部分が使えないようです http://www.slideshare.net/kaorun55/kinect-for-windows-v2-39610207