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自習室

こもります

読書感想:融けるデザイン

はじめに

講演会や研究発表の場などで(一方的に)非常に注目しお世話になっている、インタラクション研究者、渡邊恵太先生の著作が出たので、発売日に買って読みました。

あまりに「はまった」ので、2周読んだところで読書感想ブログします。

融けるデザイン ―ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論

融けるデザイン ―ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論

渡邊恵太先生

の研究については、彼のホームページにきれいにまとめてあるので、そちらに目を通してから本を読まれると、より理解が進むかと思います。

サイト上で試すことのできる Visual Haptics や 味ペン は是非体験してみてください。

また、本書の中でも繰り返されている自己帰属感について、iPhoneを事例に紹介されている記事があり、わかりやすいので、本を読む前に読んでみると良いかと思います。

感動した一節集 兼 ざっくり要約

自分のためのメモと本書のイメージ紹介として、私が「なるほどー」とか「そうだ、その表現だ!」とか「この考え方は使える」と膝を打った文章を一部引用させていただきます。

この記事を書く前、2周目を読んでいるときに作ったメモは、この記事の10倍くらいあるのですが、何とか選抜して減らしてみました。(そのくらい、読み応えがあります!)

正しい切り出し方ができていなかったら渡邊先生に非常に申し訳ないので、少しでもご興味もたれた方は是非本を読んでください(^^;)

インターフェイス/インタラクションデザインとは

インターフェイスのデザインとは、コンピュータと人との関係性を設計し、人の行動や活動を作ること

コンピュータとインターネットで、なにやる?って考えたときに、ついうっかりスマートテレビとか作ってしまうと、思考の広がって無さが露呈して非常に残念な感じになるので、いま人は、何をするか何が起こるのか何を得て何を感じるのか、もっと自由にデザインしなければいけない。  

インターフェイスデザインとは、可能のデザイン。環境から人が何を知覚し、どんな行為を生むかをデザインすること。

現象レイヤの体験と自己帰属感

現象レイヤの体験(人の認知や心理な観点で見た人の知覚と行為)をデザインすることがいかに大切であるか、についての説明。

会社では当然「高いクオリティ」や「美しいビジュアル・アニメーション」を求めるけど、その具体的な評価指標を考える上で非常に参考になると思いました。

インターフェイス石器時代のような道具のあり方、原因と結果が直接的な関係になることを一つの目標とする。ハンマーという道具自体を意識せず、釘を打つこと(対象)に集中できるようなあり方が、道具が透明である、ということ。

パソコン操作中にカーソルを意識しないことや、iPhoneの体験の良さを例に、自己帰属感が説明されます。iPhoneを操作しているのではなく、その先の情報に直接触れているような感覚を得られるようになる。

(iPhoneが非常になめらかにさくさく動く意味は→) 指とグラフィックとの高い動きの連動性が道具的存在となり、自己帰属感をもたらす。そしてその結果、道具としての透明性を得る。

ユビキタスコンピューティングから、環境と知覚、ギブソンの話

人間と環境の間に、行為だけでなく、行為を拡張する道具が介入すれば、別の次元の「可能」を知覚し、また行為へつながる。良い道具は、特にこの可能の知覚が優れている。そして、環境と接続する知覚と行為は途切れることなく循環している。それが「体験」の正体であると思う

私がいすや丈夫な台を見れば「座れる」と思うのと同じ透明感で、コンピュータが人とインタラクションし機能する世界、ということか。

情報技術を中心としたインタラクションデザインの目標は、ユビキタスコンピューティングの流れをくめば、もはやパソコンやスマートフォンを使っていると言う意識がないまま直接コンピュータやインターネットの恩恵を受ける透明性をどうやって実現するか、ということなのだ

環境と知覚、という考え方からインタラクションを考えると

インタラクションは既にある人間の知覚行為を支えている環境の仕組みを活かしながら、コンピュータという異物をうまく馴染ませる。自然回帰ではなく、世界を拡張するために。

人と世界の拡張、については説明が繰り返されます

なぜ自己帰属感が大事か

目的行為への集中だけではなく、、、

自己帰属した道具は透明化し、意識されなくなる。すると何も感じない世界があるのだろうか。(中略) 自己帰属がもたらすのは、そこにある新しい知覚世界だ。(中略)道具はあなたを変えながら世界との接点を変える。自己が拡張される。

最近はやりの「拡張人間」も、ロボティクスとかセンシングとかV/M/A/R的な派手な側面ばかりではなく、渡邊先生の研究のように日々の体験を静かに変えるような側面からも考えて取り組んでいきたいです。

自己帰属感が高いと、自己感や「私が感」が生まれて「自分の体験」が立ち上がってくる。この体験こそが生きている実感、あるいは愉しさや喜びとも言える。生きている実感のようなものを、その道具/サービスを使う中で感じられる

ここまで来ると会社では説明しづらいですが(笑) 個人的には納得いったし、こういった観念を常に持って取り組んでいきたいです。

デザインへの取り組み方。体験の設計方法の具体的取り組み。意識すべきこと

これからのデザイン。画面のデザイン、モノの形のデザインにとどまらない。

インターネット + コンピュータのメタメディアの持つ、(既存のメタファに縛られない)表現の自由度と柔軟性の高さを最大限に生かし、新しい価値を生み出す

20世紀の技術は、人がこれまでやってきたことを効率よく代行するものであった。これからは知的創造行為も含まれる。本書が目指すのは、個人の能力拡張とそのデザインである

メタメディアのインターフェイスデザインの実例

実世界へ直接働きかけるインターフェイス。情報の道具化、情報自体を道具として利用する。人々が利用する道具自体にウェブ上のデータを結びつけ、物理的に制約を与えて、人の行動を直接的に支援する

それらの実例が、smoon, integlass, length printer などのプロジェクト。

パラレルインタラクションのすすめ

ユーザーインターフェイスの常識とは、「システムを使いたくて使っている人」や「目の前に居る人」を暗黙の内に前提としている。そのため操作を提供するデザインを「ユーザーインターフェイス」と呼んでいる。暗黙的にインタラクションの高速を前提に設計してしまっている 「私のシステムを使っている限り、私のシステムは使いやすい」

パラレルインタラクション。マルチデバイスの時代。「あなたのサービスはユーザーの生活のごく一部でしかない」

  • 文脈はデバイスから生活へ
  • 拘束性は配慮へ
  • 利用タイミングは集中から分散へ

(やや禁則事項ですが) これは、会社の上の人ほど逃れられない呪縛みたいになっているのをひしひしと感じています。「パラレルになるとしたら、プロダクト/コンテンツの価値が低い証拠だ」とか言われかねない勢いです。そういった文化を背景にビジネスをやってきた会社ですからそう考えてしまうのも仕方ないかもしれませんが、自分が関わるプロジェクトはそういうところを少しずつ変えていきたいと思っています。

さいごに

研究者の方の著作なのに、実際の生活に具体的な提案をしていかなければいけないメーカーの人間(私)に、かなりダイレクトに響く内容でした。

自己帰属感の話、iPhoneの例は非常にわかりやすく「そこのクオリティ上げたら、商品売れるの?」「それより機能を増やすべきじゃないの?」という「あるある」問答集に対する明確な答えになっており、これから積極的に同僚内で布教していきたいと考えています。

まずは、理解のありそうなデザイナさんやエンジニアさんに本書を布教して、こういったとこ大事にして企画とかインターフェイスデザインとかしていこうぜ!という雰囲気を作り出していきたいです。