自習室

こもります

ビジネスモデル・ジェネレーション 感想

半年以上前に同僚のUXデザイナーから勧められていたのだが、遅ればせながら読んでみた。彼女は海外の有名ソフトウェアメーカ、通信会社を渡り歩いてきたUXデザイナーで、いま一緒に取り組んでいるプロジェクトでも、ワイヤフレームの作成やユーザーテストを取り仕切っている。この本を薦められた時はまだ国内未発売、私が読んだのは日本語版。

ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書

ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書

結果、いま自分が就いているプロジェクトが、新しいビジネスモデルをつくることそのものだったという事が遅ればせながら理解出来てしまった(ほんとに遅い!) 彼女から勧められた時点で読んでいれば、今のプロジェクトへの僕の参与度を画期的に上げられただろうに、と思うと非常に悔しい!

自分の現状と照らし合わせて、非常に良いタイミングで読んだな、と思った

大企業において、平時行われているビジネスと異なるモデルでビジネスを動かすのは非常に難しことのようだ。社会人始めて1年と3ヶ月だけど、もはやうんざりする曲面にたくさんぶち当たっている。我々には新しい提案がある、あっちには既存プロジェクトとの兼ね合いでやりたくないことがある、また別の部署は自分たちのやり口でやることが当たり前だと疑わず、新しいやり方に否定的。意見は出すけど手は貸さないよ、とか。人の働き方を変えたり業務に普段と異なるフローを突然持ち込むと面倒に思われるのはまぁ仕方ないのだけど。変えなきゃいけないのだ。


そんなときに、

  1. ビジネスモデルを描く "Canvas" を全員が共通して理解し
  2. いくつかの "Patterns" を通してその有効性、実際の運用を知り
  3. ビジネスモデルを "Design" するための有名なテクニックを身につけ
  4. 環境の変化への対応、モデルの評価、複数のモデルを運用することなど、実際の運用上の "Strategy" を考慮し
  5. 実際にビジネスモデルを設計してみる。その際にチームの組み方から運用まで "Process" を示す。


という非常に整頓された「手法」を提供してくれる書籍に出会えた。
実際、会社の先輩方の資料や話の端々で見聞いていたテクニックや、ビジネスモデルの視覚化、収益モデルの話などがたくさん出てきていて、「あぁ、知ってる知ってる」という印象を持った。この本に先輩方が使っている知識はまとまっている、という安心感を持つことができた。

お勧めしたい

書籍中でも再三強調されているように、この書籍の内容をプロジェクトに参加する皆でシェアすることで、かなり会議が円滑になり、新しいビジネスモデルの構築を促進すると感じた。

なにより、ビジネスモデルってなんだよ、という感じの社会人2,3年目くらいまでの若手は是非読むべきだろう。おそらく、日本の会社の上の人たちはこんなにロジカルにビジネスを考えていないだろうから、こういった技術を今のうちに身につけておくことは絶対にプラスだ。自分の本職・技能にプラスすることで武器になる。

別に自分が直接ビジネスモデルをつくる立場である必要はない。先に書いたように、大企業ではどうしても自分のシマを守りたくなるものだが、新しい事をし、会社を変革するには、旧来のビジネスモデルを根本から見直さなければならない。なにか新しい仕事を持ち込まれた時に(それこそ最下っ端な立場としてそれに関わるとしても)その「新しい事」がどのようなビジネスモデルで回っていくのか分かれば、その中で自分に求められていること、最終成果(ビジネスがまわること)の中で自分がなにに貢献出来るのかがはっきりするだろう。


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以下ポイントポイントで良かったこと

オープンビジネスパターンについて

外部のアイディアや技術・知的財産を企業内の開発や商品化のプロセスへと持ち込む「アウトサイド・イン」。P&Gは研究上の課題を外部の専門家に開示し、解決方法を開発した人に賞金を与えるシステムを持っている。 その逆、社内の使っていない特許や技術を外部でマネタイズする「インサイド・アウト」。パテントプールを外部の研究者が利用出来るようにする。
これらのパターンは、面白さやおどろき、以前からの差分が良しとされるエンタメメーカーでは活用しづらい。が、IT業界のオープン性や先進技術丸ごと外から買ってくるケース(Kinect,Siri等)などを見てもその効果は明らかで、メーカーでもこういったパタンを検討出来ないだろうか。Kinectは大学など研究機関で「自発的に」研究が進められる希有なケースだが、こういったムーブメントを作り出せないか考えてみたい。

レイアウト・絵の入れ方にこだわっていて、読み進めるのが楽しい。

それはとてもとても。横長のレイアウトで取り扱いに困るのが弊害。

理解し易い論理構成 とくに "Design" の章で

新しい技法を披露する際に、まずその価値、使い場所、なぜ必要とされるのか、といったことを先に提示し、その後に続く具体的な技法を学ぶモチベーションを上げてくれる。突然技法を披露されるのより、どのように役立てるために何を学べば良いのかがわかるのですっと入ってくる。

実践的な "Process" の章

4章かけて説明してきた要素をどういった順で活用し、各局面においてどのようなことに気をつけなくてはならないかを説明してくれる。ここまで読むと、実際にビジネスモデルを構築する際の具体的な手順が大まかに頭にイメージ出来るようになる。そうなるように、この書籍全体が構成されている。



私は本を読むのが非常に遅いのですが、この書籍を読むのにかかったのはおよそ6時間くらいでした。2(h)*3(days) くらい。すらすらと読めたと思います。